事業内容
事業の主旨・目的
日本の農業「人口減少・高齢化・耕作面積減少」という課題を解消する方策として、障がい者や高齢者が農業に携わるよう支援する「農福連携事業」が広まっています。
福祉側からは社会福祉法人やNPO法人が農業分野にアプローチしていく際に、社会福祉法人や施設等で業務に係る指導者として、農業の知識がある社会福祉士が必要になっています。
本校では令和3年度入学者から、社会福祉主事資格を取得し社会福祉士の国家試験受験資格を得て農業に関わる知識や実習が可能な教育課程を編成しています。
北海道の基幹産業である農業を活性化し、若者や高齢者、障がいのある人々が多く住むことで地域が元気になる取組を行い、地域でこの取組を支える人材を育成するために地域の高校と専門職を養成する専門学校が一貫したカリキュラムを構築することを目指しています。
連携先は、余市紅志高校と余市養護学校、NPO法人どりーむ・わーくす、行政機関は余市町、北海道教育庁と連携協力しています。 さらに、札幌大通高校と札幌豊明、札幌みなみの杜高等支援学校と連携し、発達障がいや軽度の知的障がいのある生徒の進学希望者を受け入れ、福祉の資格を目指しながら農業に従事することで社会貢献ができるコースとして、高専接続を図り、連続したカリキュラムを作成することを目標としています。
学習ターゲット・目指すべき人材像
- 学習ターゲット :専門学校生・高校生(発達に困り感のある学生・生徒含む)
- 目指すべき人材像 : 農福連携に取り組む社会福祉士、地域活性化に取り組む青少年
当該教育プログラムが必要な背景について
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①農業人口の減少と高齢化
日本の農業が抱えている課題の一つに農業就業人口の減少があげられます。農林水産省によると、2009年の農業就業人口は約289万人でしたが、その後は減り続け、2019年には約168万人へ減少しています。また、農業従事者の年齢構成の推移では、2009年の農業就業人口のうち65歳以上は約170万人で全体の約61%でしたが、2019年では65歳以上が約118万人で全体の70%となっており、高齢化も課題となっています。
農林水産省「平成31年農業構造動態調査」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukou/index.html -
②北海道の農業経営の課題
北海道農政部が2020年6月に発表した「北海道農業・農村の現状と課題」においても、全国の課題と類似しています。耕地面積は1990年の1201haをピークに横ばいですが、荒廃農地面積は2010年で8521haであったものが、2018年には2377haと減少。農家経営体数は年々減少傾向にあるものの、1農業経営体あたりの経営農地面積も2005年は19.6haだったものが、2019年で28.5haと増加傾向にあります。これは企業等の参入や農業法人が増加傾向にあることによるもので、農家経営者数および農家戸数は年々減少傾向にあります。また、65歳以上の比率は1990年21%であったが2019年2月現在で43%まで上昇しています。地域の産業力の低下、人口減少・若者の流出など、課題は計り知れませんが、「農福連携」を取り入れることにより課題解決の糸口になると考えております。
北海道農政部 令和2年6月 北海道農業・農村の現状と課題
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/nsi -
③必要に迫られる障がい者の就職状況
日本における障がい者の総数は、約964.7万人であり、全体人口の7.6%に当たります。内訳は身体障がい者が約半数、精神障がい者は4割、知的障がい者は1割となっております。※1
特に精神障がい者は、1999年の204.1万人から2014年には392.4万人に増加。
障がい者の就職状況として、民間雇用者数の前年比4.8%と増加傾向にありますが、障がいのある方々の社会での受け皿が十分な状況とは言えません。※2
そのため、国や自治体、法人などが障がい者や高齢者が農業に携わることができるように支援する取り組みを始めました。この2016年頃から広まり始めた取り組みが「農福連携」として注目されています。※2)厚生労働省 令和元年 障害者雇用状況の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html -
④農福連携農家のメリット
農林水産省認証登録機関である日本基金が、2018年に農福連携農家 (350客体中124客体が回答に対して行った「農福連携の効果と課題に関する調査結果」によると、回答者の約8割が「5年前に比べて年間売り上げが上がった」、「人材として貴重な戦力」と答えています。その他、農福連携の今後の取り組み意向の質問では、直接雇用している農家、福祉施設に雇用委託している農家共に、福祉事業所への委託を拡大したいと回答した農家が過半数を占めています。労働力不足の解消、障害者の社会貢献によるQOLの向上と、農家自身のQOLも向上、人と人との交流が盛んになることで、地域活性化にも繋がり、農福連携の必要性が伺えます。しかし、障がい者とのコミュニケーションに関する課題があると約6割が回答しており、本校が目指す農福連携の知識を持ち合わせた社会福祉士の必要性が浮き彫りになっています。
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⑤専門学校入学生の傾向
本校では、不登校、発達障がい、精神疾患などにかかわらず、個々の多様性を尊重したインクルーシブ教育を推進しており、あらゆる環境で学んできた入学生を受け入れています。彼らの能力を最大限活かすことを目的として、高校と専門学校の教育課程を連携させ、また編成を工夫することで6年間(高校3年間、専門学校3年間)を一貫する教育で中途退学者を減少させ、就学から就職までのフォロー体制を構築していきたいと考えています。
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⑥高等支援学校生徒の上級学校進学
高等支援学校の生徒が上級学校で学びたい気持ちがあっても、受け入れる専門学校が少ない状況にあります。彼らの真面目で根気強い特性や、社会貢献に関わりたいという強い気持ちを生かした教育を目指す教育課程に着目した専門学校は今まで見られませんでした。今回の取り組みは、資格を取得し、やりがいのある就労に結び付け、支援をされる側として今後の将来を生きるのではなく、資格を取得し支援をする側として社会参加をし、「生き生きと自立した生活」を目指す取組となっています。
独立行政法人日本学生支援機構 大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査 平成30年度合同ヒアリングより
https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/chosa/index.html -
⑦専門学校が「農福連携」に取り組む理由
ここまで記述しました通り、農業の課題、障がい者の就労、学校連携の必要性などが背景とされていますが、この課題に福祉側が障がい者に農業活動を積極的に取り入れていなかった理由として、福祉側の農業に対する抵抗感があったと考えられます。農林水産政策研究所客員研究員の宮田喜代志氏によると、福祉側が農業を行わない理由として「土地がない」(57%)「知識・技術がない」(38%)「専門スタッフ確保困難」(36%)が大きい理由となっています。本校の事業によって各農園が連携協力してくれて「土地」の課題は緩和されており、「スタッフ育成」と「知識・技術」の習 得に関しては本事業が大いに解決に取り組むこととなり、地域社会や地球的課題への貢献が見込まれ、SDGs達成に向けての行動にもつながると考えております。
令和元年度 第3回九州厚生局地域共生セミナー ~農業と福祉の連携について~「農福連携とはなにか?」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/caresystem/r1kyoseiseminar.html -
⑧農福連携とSDGs
一般社団法人日本農福連携協会が主催した「ノウフクフォーラム2019 農福連携×SDGs 」では、「SDGs(持続可能な開発目標」の17の目標のうち、10の目標に対して農福連携が貢献可能として発表されました。
01.貧困をなくそう
02.飢餓をゼロに
03.すべての人に健康と福祉を
08.働きがいも経済成長も
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
「農福連携」事業に福祉の専門家として従事する人材を育成するカリキュラムに取り組むことで、高校生・特別支援学校生が専門学校生と一緒に農福連携について学ぶとともに、SDGsも学ぶことができます。日常的に自らの生活を改めることや、将来の行動に繋がり、持続可能な社会づくりに貢献できると考えます。マイナビ農業ニュース 持続可能な共生社会の構築へ
https://agri.mynavi.jp/2019_10_04_91702/
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